2015年11月07日

No.1 「ミルコ・クロコップのキックと技術」 / 「ヒョードルは本当に最強だったのか? 〜PRIDEとUFC〜」シリーズ

日本のMMAメジャー興行、RIZIN発足記念

コラム 「ヒョードルは本当に最強だったのか? 〜PRIDEとUFC〜」シリーズ



No.1 「ミルコ・クロコップのキックと技術」------------------



私がミルコを応援し続け、かれこれ16年ほど経つ。人生の半分以上はミルコを応援していることになる。



――――1999年10月3日。大阪で開催されたK-1グランプリの開幕戦の日。


マイク・ベルナルドは、過去4度のGP出場において、ベスト4が二つ、ベスト2が一つという華々しい戦績をひっさげてリングにあがった。
当時最強と目されたピーター・アーツやアンディ・フグを一発でKOする姿は、ベルナルドが優勝候補の一角と目されるに十分な裏付けだ。

当時、30歳を迎えたベルナルドは心身ともに最も活力の漲った時期だったであろう。


コーナーの向いに俯き気味に立つは、25歳の新鋭。地方大会の決勝で敗れたため、この日はリザーバーとして登場していた。

観衆は、この目算10kg・一回りは小さい若者に興味はない。ベルナルドの剛腕がいかに炸裂するのかを見に来ていた。


ゴングが始まると、いつものようにステップを踏むベルナルドに対し、若者の動きは少ない。
軽いローの交換から、サウスポーの若者が左ハイを放つと、ベルナルドは右手でガッチリとガードした。

顎の最下部を狙った精度はよかった。

遅い、当たらない。しかし、当時、私はそう思った。


局面が過ぎると、今度は若者がローをカットしながら、プレッシャーを強める。
距離を計るベルナルドの背中がロープに接近しようとする位置で、はじめて若者が素早くステップインした。


1.5秒後、ベルナルドはマットに手をついていた。

この間に若者が行った攻撃は、右ジャブをフェイントし、左ストレートを強打、右フックの強打、対角である左ハイ。


優勝候補が無名の選手を相手に窮地に立たされている。負けるのか?
解釈に手間取る観客を置き去りにし、恐るべき圧力で2度目と3度目のダウンをパンチラッシュで奪うと、レフェリーが試合を止めた。


加速する興奮と、依然と緩慢に働く解釈で観客が混沌唖然とする中、リプレイが流れる。

ベルナルドを最初にダウンさせた攻撃のスローモーション映像。


恐るべきギア・チェンジに対し、驚異的な反応力でパンチをガードしたベルナルド。
額の位置まで上げたガードの両手の隙間から、この日の敵であるミルコ・クロコップを見据えている。

ミルコ・クロコップはこのとき、この視線を見ていたのか。あの激しい攻防の中でガードの位置までを正確に把握していたのか。

全く定かではないが、右フックを終えたミルコは右方向に上体を倒し、ハイキックの回転軌道を横から縦へと変えた。
右から襲い来るはずの蹴りは、ベルナルドの高く上げた右手の上方より降ってきたものだった。

最初にガードしたハイとは、軌道速度ともに全く別のもの。

https://www.youtube.com/watch?v=WzSQTKyP7o4


翌日以降、ミルコのこの蹴りがメディアによく取り上げられた。「縦蹴り」と石井館長が呼び、TVにおいてミットで実践していたのを見かけることとなった。当時、空手を習っていた私は良く真似て練習したものだ。


この後ミルコのハイは、KOの山を築くことになる。

その過程において、ハイの種類は
1.ベルナルド戦で見せた、ガードを迂回する軌道
2.下方から直線に突き上げる、ミドルと同じ軌道

の二つを披露している。

軌道は上下と対極的だが、見えない、ガードできないという点において一致している。

膝を畳み込み、太ももの後ろに脛を隠すことにより、軌道を隠していた。
あとは膝を上下に見せることにより足の軌道を変化させるのため、視認から反応するのは事実上不可能なもの。

ハイを腕で警戒ガードし、ローとミドルを足でカットするという最適策を見せたヒョードルも、ミルコのハイの瞬間にはとうとうガードを下げている。


2015年現在、オクタゴンにおいても、ミルコの上下を蹴り分ける技術は他の追随を許さないだろう。

しかし、ミルコは最強ではない。衰えたかといえば頷かざるを得ないが、プライドのトップ3はトップ15に入れないほど絶対的に衰えたのか?

あるいは、四点ポジションにおける頭部への膝蹴りの禁止、グラウンドにおける頭部への肘攻撃の有無、リングとオクタゴンの広さ形状の違いなど、ルール環境面に関してはどうか。
このルールへの適応は、ミルコらをアスリートとして衰えさせるまで時間がかかるものなのか。

私は数年前までそう思っていた。現在、私の見解はそうではない。


―――――シリーズは全5回

No.0 「コラムを書いた経緯」
No.1 「ミルコ・クロコップのキックと技術」
No.2 「ミルコ・クロコップのUFC挑戦失敗」
No.3 「UFCとのルールの違いが、PRIDEファイターを苦しめたのか」
No.4 「最終章、PRIDEファイターが負けた理由と、ヒョードルの挑戦」

です。


前章
No.0 「コラムを書いた経緯」
http://mma-pound-out.seesaa.net/article/429214524.html

次章
No.2 「ミルコ・クロコップのUFC挑戦失敗」
http://mma-pound-out.seesaa.net/article/429214665.html



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posted by nao_mma_ymt at 08:49 | Comment(0) | コラム(格闘技関連) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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